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2020年5月13日

営農情報

令和2年産水稲の初期管理について

1.育苗

種子更新

  • 自家採種を続けると、他品種混入や自然交配による品種特性の低下、種子伝染性病害感染籾の増加による被害の発生・拡大等が起こりやすくなるため、採種ほ産種子に更新する。

比重選

  • 比重の軽い種籾は種子伝染性病害に侵されている可能性が高く、発芽も安定しないため、比重選で充実した種籾を選ぶ。
  • 沈んだ籾を十分水洗いしてから使用する。
表1 比重液の作り方(水10L 当たり)
区分 うるち もち
比重 1.14 1.11
食塩 2.25kg 1.69kg
硫安 3.06kg 2.23kg

種子消毒

  • 「スミチオン乳剤」「テクリードCフロアブル」の2種類を使用する。
表2 種子消毒に使う薬剤と対象病害虫
薬剤 対象病害虫
スミチオン乳剤 シンガレセンチュウ(ホタルイモチ)
テクリードCフロアブル いもち病、ごま葉枯病、ばか苗病、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、褐条病、苗立枯病(リゾープス、トリコデルマ)

水10L にスミチオン乳剤10ml、テクリードC フロアブル50ml を溶かして、種籾を24 時間浸漬しましょう!

【留意点】

  • 種籾と薬液の(重量)割合は、種籾1に対して薬液2の量とする。
  • 袋に籾を7分目程度詰め、確実に24時間浸漬する。
  • 浸漬中に1~2回撹拌して薬剤が沈殿しないようにするとともに、籾袋を時々ゆする。
  • 消毒後は水洗いしないで、水切り状態で一昼夜陰干しを行う。
  • 薬液の温度は10℃以下にならないようにする。
  • 廃液は河川や池等に流さないよう注意する。(環境対策)
    • 種子消毒から浸種までの日数がある場合は、種籾を陰干して冷暗所で保存する。
    • 乾田直播では、種子消毒まで行った後アドマイヤー顆粒水和剤をウンカ対策に種籾4~8kg 当たり30~40g を塗沫処理する。浸種は行わない。

【もみ枯細菌病とは・・・?】

  • 感染した苗で増殖した病原細菌が、出穂期前後に穂に感染することで発病する。
  • 穂全体が淡紅色を帯びた褐色となる。罹病した玄米には帯状の条斑が生じる。重症穂では不稔籾が多く直立して傾穂しない(図3)。
  • 枝梗は褐変しないが、籾のみ褐変する。

浸種

  • 発芽に必要な水分を吸収させ、発芽揃いを良くするため行う。

【留意点】

  • 浸種日数は、水温15℃の場合で4日、18℃で3日、20℃で2日程度が目安である。
  • 浸ける水の量は、種籾の2倍程度。水道水を利用する。
  • 原則水の交換は不要。水温が高く酸素不足になるおそれがある場合は、初めの2日間は水の入れ替えを行わず、その後静かに入れ替える。
  • 水温が高くなると吸水ムラで発芽が揃わなくなるので、日陰等で行う。
  • 仕上がりの目安は、籾の色がアメ色になり胚が白く透けて見える状態である。

催芽

  • 浸種を終えた籾に温度をかけ、一斉に発芽させる。(専用催芽器や風呂を利用)
  • 催芽方法 : 水温30~32℃ → 約20時間

【留意点】

  • 芽が伸びすぎると播種機で引っかかりやすくなり、幼根、幼芽が折れるので注意する。
  • 催芽の目安は発芽始め~1㎜程度(図4)。
  • 風呂を利用して催芽する場合、袋が大きいと内部の温度が上がりにくいため、小袋に分けるか袋を十分ゆすって温度差を小さくする。

育苗箱の消毒

  • 苗立枯病予防のために行う。特に前年に苗立枯病が発生した場合は必ず行う。
  • 水150Lにイチバン300ml を溶かした液に、瞬時浸漬する。

【留意点】

  • イチバンは魚毒性C類と高いため、廃液が養魚池、河川等に入らないよう注意する。

播種

  • 田植予定日から逆算して、計画的な育苗を行う。
  • 塩水選・種子消毒(1日)+浸種(3~4日)+育苗日数(表3)
表3 育苗の目安
  稚苗(2~2.5葉) 中苗(3.5~4.5葉) 成苗(4.0~5.5葉)
育苗日数 16~18日前後 24~28日前後 26~30日前後
育苗箱数(/10a) 18~20枚 20~24枚 30~36枚
播種量(催芽籾) 150~180g 110~130g 50~60g

育苗管理

【苗代準備】

  • 苗代は砕土を細かくし均平化に努める。
  • 地面が凸凹だと、水が溜まり苗が発育不良になる恐れがある。

【出芽期】:3日程度

  • べたがけシート内が数日連続して高温になると、根長、草丈が短くなり、出芽不良となる(表4)。
  • 緑化に移行する時期は、芽の長さが1cm 程度を目安とする。芽を伸ばしすぎると以後に抽出する葉にも徒長傾向が残り軟弱苗となるので、被覆除去の時期が遅れないよう注意する。
表4 育苗期間の適温(℃)
  稚苗 中苗 危険温度
昼温 夜温 昼温 夜温 低音 高音
出芽期 30~32℃ 30~32℃ 37~42℃以上
緑化期 20~25℃ 15~20℃ 15~25℃ 10℃以上 5~7℃以下 35℃以上
硬化期 15~22℃ 10~15℃ 15~20℃ 10℃以上 5℃以下 35℃以上

【緑化期】:4日程度 第1本葉が展開する頃まで

  • 曇天や朝、夕方など光が弱い時に被覆を除去し緑化を促す。急に強い光に当てると、白化し苗質が低下する。

苗立枯予防

  • 育苗中に高温・多湿となった場合にカビが生えて発芽不良となる立枯病が発生することがある。
  • 予防として、播種時に床土にタチガレエース液剤の500 倍液またはダコレート水和剤の500 倍液を1箱当たり500ml 灌注する。
  • 播種後に白カビ(リゾープス)が発生した場合は、早めにダコニール1000 の1,000倍液を1箱当り1L 灌注する。(表5、6)
表5 苗立枯病と効果的な薬剤について
  発生条件 症状 薬剤名
タチガレ
エースM液剤
ダコレート
水和剤
ダコニール
1000
フザリウム
  • 低温
  • 乾燥、多湿の繰り返し
白~淡紅色のカビ  
ピシウム
  • 低温、多湿
地際褐変して坪枯れ    
リゾープス
  • 高温、多湿
    (緑化期には低温)
白いカビ  
トリコデルマ
  • 乾燥
  • pH4.0以下の培土
白いカビ→緑色のカビ    
ムレ苗
  • 低温多湿の後高
急に葉が巻いて萎れる    
表6 薬剤の例
  適用病害虫名
使用目的
希釈倍率 使用液量 使用時期 本剤の
使用回数
使用方法
タチガレ
エースM液剤

【苗立枯病】

  • フザリウム菌
  • ピシウム菌

【ムレ苗防止】

【根の生育促進】

【移植時の活着促進】

500~
1000倍
1箱当たり
500ml
播種時又は
発芽後
1回 1回土壌灌注
ダコレート
水和剤

【苗立枯病】

  • リゾープス菌
  • トリコデルマ菌
  • フザリウム菌
400~
600倍
1箱当たり
0.5L
播種時から
緑化期
※但し、
播種14日後まで
2回以内
※床土への混和は
1回以内
灌注
ダコニール
1000

【苗立枯病】

  • リゾープス菌
1000~
2000倍
1箱当たり
1.0L
播種時から緑化期
※但し、
播種14日後まで
2回以内 土壌灌注
500~
1000倍
1箱当たり
500ml
  • 育苗箱は30×60×3cm、使用土壌は5L
表7 みのるポット成苗、みのる中苗を育苗する目安
ポット成苗育苗
田植35日前 育苗準備
育苗箱の準備
30~36枚/10a
育苗箱の準備
イチバンで瞬時浸漬
苗土
なえじまん2.0L/箱
(約3.5袋/10a)
(折衷苗代)苗代作り
苗代面積
10~11㎡/10a
施肥
肥播種7~14日前に全面全層混
整地
できるだけ均平に行う
短冊作り
畦幅1.5m、溝幅30cmの短冊
28日前 播種作業
苗床入れ
表面より2~3mmまで入れる
播種
3粒/ポット、催芽籾50~60g(乾籾1.5~1.7kg/10a)
苗土
苗箱のポットとポット間の表面に残らないようにする
育苗管理
ネキリネット
網目から泥水が上がってくるまでよく押さえる
箱ならべ
床面に密着するようベニア板などで押さえる
被覆
苗箱の上にラブシート(又は新聞紙)をかけて
その上にシルバーポリ♯90により被覆する
25日前 育苗管理
被覆除去
3~4日して1cmに出芽したら、日中を避けて被覆資材を除去する
水管理
溝の中位を目安に、箱面まで水位が上がらないようにする
散水
被覆除去時に覆土が持ち上がっていた場合に行う
20
追肥
葉色が落ちかけたら、硫安水(硫安20gを水10Lに溶解)を散布する
※肥あたりを避けるため、朝か夕刻に行う
10
水管理
3葉位で溝の水を落とし、かん水が必要な時に溝に水を入れる
1
追肥
植え付け肥として硫安水200倍液を500ml/箱、散布する
0 田植え
中苗育苗
田植32日前 育苗準備
育苗箱の準備
20~24枚/10a
育苗箱の準備
イチバンで瞬時浸漬
苗土
なえじまん2.1L/箱(約3.0袋/10a)
(折衷苗代)苗代作り
苗代面積
8~11㎡/10a
施肥
播種7~14日前に全面全層混和
整地
できるだけ均平に行う
短冊作り
畦幅1m、溝幅40cmの短冊
25日前 播種作業
苗床入れ
表面より2~3mmまで入れる
播種
催芽籾110~130g(乾籾2.0~2.5kg/10a)
苗土
苗箱の表面に残らないようにする
育苗管理
箱ならべ
床面に密着させ、水の吸い上げを確認
被覆
苗箱の上にラブシート(又は新聞紙)をかけて
その上にシルバーポリ♯90により被覆する
21日前 育苗管理
被覆除去
3~4日して1cmに出芽したら、日中を避けて被覆資材を除去する
水管理
溝の中位を目安に、箱面まで水位が上がらないようにする
散水
被覆除去時に覆土が持ち上がっていた場合に行う
15
水管理
苗床の土が乾かないよう管理する(1.5~3葉期)
1
追肥
植え付け肥として硫安水200倍液を500ml/箱、散布する
0 田植え

2.本田管理

田植

  • 耕起は、作土の深さが15〜20cmを目標に行う。
  • 代かきは、均平になるように行う。
  • 地力がり 穂数の確保が容易なほ場では、1割程度株間を広げる 疎植栽培 に すると 、 苗箱数を減ら し 、低コスト、省力につながる。
  • 植え付け深さは 、 2~3cm程度とする。
  • ヒノヒカリは早植えすると出穂が早まる傾向があり、登熟期の高温により白未熟粒が発生する危険性が高まる。

除草剤

  • ほ場の条件に合わせて 、 栽培ごよみを参考 に 除草剤を選んで散布。

除草剤選択のポイント

除草効果を期待
粒剤(ベンケイ1キロ粒剤などがベスト)
水持ちが良い、省力したい
フロアブル剤、ジャンボ剤
後から生える雑草が多い
体系処理(初中期除草剤 +サンパンチ1キロ粒 など)

※除草剤 使用時の注意点

  • 代かきは均平になるように行い 、 散布は登録範囲内で早めに行う。
  • 湛水状態(3~5cm)で均一に散布し散布後3~4日程度は湛水状態を保つ。
  • 散布後7日間程度は落水、かけ流しかん水を控える。

水管理

  • 間断かんがいを基本に、中干しは圃場に軽く亀裂が入る程度に行う(5~7日程度)。

3.施肥

  • 栽培ごよみを目安に、水田の条件や生育状態に応じて加減する。
  • 側条施肥田植機を使用する場合は、施肥例よりも基肥の窒素量を2割程度減らす。
  • 基肥1回施肥型は、基本的に穂肥は不要。ただし、生育期間中の高温などで生育が旺盛となり、肥切れが心配される場合には、追肥が必要な場合もある。(出穂15日前頃に化成 10kg 程度)
  • 化成分施型(化成肥料 14-14-14)は、7月上旬と出穂の25〜20日前と出穂10日前頃に 施用する。

4.病害虫防除

  • 葉いもち、穂いもち、紋枯病、ニカメイチュウ、トビイロウンカ(秋ウンカ)など病害虫は、出穂前(穂ばらみ期(出穂前10日 、穂揃い期に栽培暦を参考にして防除する 。
  • 紋枯病に適用がある苗箱剤もあるので、被害の多いほ場では使用を検討する。
表8 紋枯病に 登録のある 苗 箱剤
薬剤名 適用害虫名 使用時間
スクラム
箱粒剤
いもち病、紋枯病、ウンカ類、ツマグロヨコバイ、コブノメイガ、フタオビコヤガ は種時覆土前〜
移植当日
もみ枯細菌病、白葉枯病、内顎褐変病、穂枯れ(ごま葉枯病菌)、類似紋枯症(褐色紋枯病菌)、類似紋枯症(赤色菌核病菌)、イネツトムシ、イネドロオイムス、イネミズゾウムシ、ニカメイチョウ 移植3日前〜
移植当日
  • 使用量は育苗箱(30×60×3cm 、使用土壌約5L) 1箱当たり50g

【令和元年度 多かった病害虫】

紋枯病

  • 発生源は、前年の病斑上に形成された菌核である(図6)。菌核は数年土中に残り、発生が多い翌年は多発しやすい。
  • 分げつ最盛期以降、高温多湿時に多発、特に出穂後の高温多湿で多発する。
  • 上位第3葉以上に病勢が進むと被害が大きくなり、激発すると株全体が枯死する。
  • 窒素質肥料の多用を避け、過繁茂にならないようにする。
  • 例年多発するほ場では、箱施用剤で予防する。
  • 8月上旬頃に株元に発生が見られる場合は、粉・液剤は出穂15 日前頃、粒剤は出穂10〜30日前頃に散布 する 。

ジャンボタニシ

  • 令和2年も昨年同様暖冬である。発生が多いことが予想される。
  • 田植え後20日間は浅水管理する。水深が4cmを超えると被害が生じやすくなる 。
  • 農薬で防除する場合
    スクミノン
    1〜4kg/10a(収穫60日前まで 、2回以内)
    スクミンベイト3
    2〜4kg/10a(発生時、使用回数は制限なし)
    • 「スクミノン」と「ジャンボたにしくん」 は併用しない。また、散布後7日間は掛け流しをしない。
  • 用水路から侵入させないように、水田の取水口と排水口に金網(2cm以下の細かい目)を設置し、金網の外側にはゴミが詰まらないよう 、目の粗い網を設置する(図7)。

トビイロウンカ

  • 出穂期前後の基幹防除を行ったほ場では、被害が抑えられていた。
  • 西日本では九州を中心に飛来が増える傾向があり、発生注意報や警報等の情報に基づき対応する。

稲こうじ病

  • 感染は幼穂形成期に起こるが、穂ばらみ期の降雨が多い場合に発生が助長される。
  • 本病菌の厚膜胞子は土壌中で数年生存するため、次年度の出穂前の天候次第で、再び多発する恐れはある。
  • 穂ばらみ期頃 の 予防が基本で、菌塊が見えてからの防除は効果が期待できない。
    例)モンガリット粒剤:出穂21〜14日前 、銅剤(粉・液剤):出穂21〜10日前

5.適期収穫

  • 水田全体の40〜50%で籾が見える出穂期を記録し、出穂後日数を数え目安とする。
表9 収穫 適期の目安
品種 出穂後日数 青味籾率 出穂後積算気温
ヒノヒカリ 38〜45日 20〜5% 950〜1,100℃
朝日、アケボノ 40〜50日 15〜3% 900〜1,100℃
にこまる 45〜56日 20〜6% 1,000〜1,200℃

注)青味籾率とは不稔籾を除いた全籾のうち、青味が残っている籾の割合

6.乾燥調製

  • 計画的に収穫を行い、すみやかに乾燥する。高水分の籾を長時間放置するとヤケ米(発酵 米)となり品質が低下する。
  • 適正水分目標は14.5〜15%。過乾燥は食味低下の原因となる。
  • 急激な乾燥による胴割米発生を防ぐため、高水分籾は十分に常温送風してから加温し始め、 毎時乾減率を 0.8 %以下に抑えてゆっくり乾燥させる。

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岡山市農業協同組合営農部 指導課

TEL 086-225-3224FAX 086-225-3207

〒700-8535 岡山市北区大供表町1-1

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